今日の主役——誕生日であるルチルの希望により、晶と南の国のみんなで、ルチルとフルールの部屋に集まって徹夜飲み会が開かれた。
ルチルの好みに合うお酒はもちろん、飲み物も食べ物も色々な種類がたくさん用意している。大仰なものではないけれど、ルチルの誕生日を全員が漏れなく楽しめるような工夫が自然と成された集まりだった。
そして徹夜飲み会と言えども無理に起きていることを強要されるわけでもない。だいぶ遅い時間になってミチルはルチルの膝の上で眠ってしまったし、そのミチルの頭を撫でながらフルールも半分目蓋が落ちかけていた。
しかし、そんな中、ルチルが真剣な顔で怖いことがあると呟いた瞬間にフルールは目を丸くした。
フィガロとレノックスも顔を見合わせてルチルを囲むように座った。
息を凝らすような時間が流れる中呟かれた彼がその怖いものの正体は、税金の手続きについてだった。
張り詰めた空気が和らいだが、誰も笑ったりそんなことかと呆れることはなかった。
「違う国にいる時の税金……似た感じだと、フルールの両親が南に来る前にどうしていたか、フィガロ先生は知っていますか?」
「いや、そこまで突っ込んだ話はしたことないなあ」
レノックスとフィガロがルチルとフルールの頭を飛び越えて会話をしていたら、フルールがふわふわとした口調で答えた。
「それらしい定住ではなかったんですけど、一応、西の国を拠点としている……みたいなかたちで、詳しい方に基本的にお任せしていたみたいですよ。お父様が西の出身ですし、西の国は特に芸術家には芸術に集中してほしいって人もおおいので……ううん、でもこの状況とはちょっとちがうかしら」
フィガロが何度か瞬きをしてから、「いやでも確かに、専門家に相談するのが一番だ」と頷いた。
そしてフィガロとレノックスが口々にルチルを励ますと、誕生日の主役は気分が落ち着いたのかグラスを掲げて再び乾杯をした。その様子を見てフルールは顔に微笑みを浮かべ、ルチルの身体に寄り掛かったまま目を閉じた。
「フルールも夢の中だね」
「いつも早起きですからね。朝に運動しているとよく会います」
「ふたりとも朝早いですよね。レノさんはまだ眠くないですか?」
「俺は長く起きているのにも慣れているからな。ルチルの限界まで付き合うよ」
「やった!」
フルールはそんな声を聞きながら夢の中に歩みを進めた。
太陽が昇って明るくなってきて、フルールが目を覚ますと、見慣れた部屋は大きくなっていて、並べられたベッドに晶と南の魔法使いたちが並んで寝ていた。
身体を起こそうとしたらルチルの腕が背中に回っていて遮られる。どかすこともできるし、経験上そうしたところでルチルは起きないが、フルールはそのままベッドの中にいることにした。フルールもルチルの背中に手を伸ばしてゆっくり撫でる。
みんなの寝息が聞こえる、ふわふわなベッドの中、あたたかい大好きなひとの体温を感じる。素敵な朝を迎えた。
