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2周年フレグランス

Top note
ピンクグレープフルーツ、洋梨

Middle note
マーガレット、フリージア、林檎

Last note
マスカット、フィールドグリーン、ムスク

魔法使いの約束 2nd Anniversary Store
Cast a Spell on You 香りの詳細より引用

 フルールが早朝にベッドを抜け出し、いつものように朝のジョギングと、歌うための基礎練習をこなし、そしてシャワーを浴びて部屋に戻ると、ルチルが既に身支度を整えてにこにこと笑っていた。

「おはよう!」
「おはよう、ルチル。今日は早起きね!」
「楽しい夢が見られてうきうきしちゃって!」

 うふふと口元に手を当てるルチルにフルールが抱きつくと、その感じがいつもとちょっと違っていた。
 顔を胸元に寄せると、爽やかで瑞々しい果実を思わせる香りが広がる。

 一度瞬きをして、「あ!」と声を上げた。

「ルチル、この前クロエが選んでくれた香水をつけてるでしょう!」
「大正解!」
「いいな、いいな、私も!」
「はーい、どうぞ!」

 ルチルが香水を持ってきてフルールにつけると、フルールはスカートを翻してその場でくるりと回った。
 同じ香水をつけていても、フルールの肌から体温で揮発するに匂いはルチルのものとは結構違っている。
 その違いを楽しんで、さっきのルチルみたいにフルールはうふふと笑った。

「素敵!」
「うん! こんな素敵な日は──」

 そこでルチルは言葉を切って優雅に、恭しく手を差し出した。

 いい夢が見られた清々しい朝。風も穏やかで、日差しも柔らかい。今日は南の魔法使いの任務もないし、フルールの仕事もなかった。誰かと予定を合わせてもいないし、一日中自由な時間が開いている。
 心が浮き足立って、なんだかとっても楽しくて、クロエが選んでくれたとっておきの香水もつけた。ふわりと、ルチルのものと、フルールのものの甘やかな香りが鼻に届く。胸がときめいて、元気になって、ちょっとおしゃれな気分になる。そんな明るい気持ちをくれる香りだ。心持ちいつもよりも身嗜みを整えた。なんでもない日も、特別な日になりそうな予感がした。

 だから、こんなに素敵な日は──。

「デートしませんか? 私の奥様」

 フルールは喜色満面の様子で、それでもルチルのお遊びに合わせて淑やかに手を差し出した。

「ぜひ、喜んで。私の旦那様」

 ルチルはフルールの手を取ると、一瞬前までの礼儀正しさなんて忘れて無邪気に「やったあ!」と彼女の身体を引き寄せた。

 ふたりは中央の街を本日のデートの舞台にした。

 一緒に「あれが綺麗」だとか「素敵なものがあった」だとか喋りながら歩いていると、動きに合わせて香水の華やかさが広がる。近所の人たちみんなで収穫した果物や、ふたりのマナエリアの花園のような太陽の下の恵みの甘さを感じて、自然と足取りもどんどん軽くなってくる。大人ぶって背筋を伸ばしたくなるのに、故郷を想起して安心感が得られる。クロエが選んでくれた香水はふたりにとてもぴったりで、とても魅力的だった。

 たくさん見て回って、相談をしながら、おしゃれで綺麗で、でもかわいらしいカフェに入ることにした。開放感のあるテラス席を選んで案内してもらう。
 そこは紅茶に力をいれているようで、たくさんの種類があった。ランチもデザートも色々な種類があって、どれを選んでも楽しそうだ。
 ふたりであれこれとメニューと睨み合って、香り高そうな紅茶と、美味しそうなサラダとランチに、フルーツがたっぷり乗ったタルトを楽しむことにした。なんとなく今日は、飲む物も食べる物も、ふたりとも香水のイメージに近いものを選んだ。甘酸っぱくて、華やかで、重くもないしくどくもない。

 香水は静かさを保って、ふたりのお茶の時間を邪魔することはなかった。

 せっかくのデートなので、それぞれ香水をつけ直し、身だしなみをあらためて整えてふたりは観光を続けた。

 踊り出しそうなくらい軽やかに楽しんで午後を過ごし、太陽が沈んでいって空が橙色に染まり始めてきた頃に箒を魔法舎に飛ばした。
 深みのある花と果実の香りと、奥の方に大地を思わせる重厚さを感じる匂いが風に煽られて届く。

「楽しかったね、フルール!」
「ええ、とっても楽しい一日だった!」

 心躍る一日を振り返りながらも、その香りが一日の終わりと休息を促してくれる気がした。今日はゆっくり眠れそうだ。きっといい夢を見て、また次の日も楽しい一日を送れる。

 ルチルはフルールの方を振り返って悪戯っぽく笑った。

「ねえ、この後、また魔法舎のバーでデートしない? 美味しいお酒を飲もう!」

 フルールは声を出して笑った。まだ楽しい一日は終わっていないらしい。

「ええ! もちろん! 行きましょう!」

 魔法舎のバーは夜の人気者だ。ひとりでいたい人も、賑やかなのが好きな人も、誰かしらがグラスを傾けている。だから完全なデートにはならないかもしれないが、それはそれできっと素敵な夜になる。ふたりきりのデートも好きだけれども、知り合った人とお酒を飲むのだってふたりは好きだった。

 微かになった甘くて大人っぽい香りが鼻をくすぐった。